
世界三大絵本賞は分かったけど、日本の絵本賞も気になるなあ…
これまで世界三大絵本賞を解説&紹介してきました。
世界三大絵本賞とはコールデコット賞、国際アンデルセン賞、カーネギー画家賞です。
では、日本国内の絵本賞はどんなものがあるのでしょう?
今回はまさにそのまんまの名前【日本絵本賞】について解説します!
・日本国内の有名な絵本賞が気になる
・日本で評価されている絵本を知りたい
・日本絵本賞について詳しく知りたい
日本絵本賞について
日本絵本賞って?
公益社団法人全国学校図書館協議会が主催
日本絵本賞とは、公益社団法人全国学校図書館協議会が主催する日本国内の絵本賞です。
絵本芸術の普及、絵本読書の振興、絵本出版の発展に寄与することを目的として1995年より創設されました。
前身は【絵本にっぽん賞】
日本絵本賞は、1972年から1992年まで続いた絵本にっぽん賞を継承しています。
絵本にっぽん賞は全国学校図書館協議会と読売新聞社が共催していた絵本賞です。

絵本にっぽん賞が終了後、全国学校図書館協議会が単独主催で始めたのが日本絵本賞ということですね!
選考対象となるのは?
どのように選ばれる?
まず、常設されている全国学校図書館協議会の絵本委員会が、全国学校図書館協議会図書選定で合格した対象となる絵本を検討・評価します。
1次選考・2次選考はこの絵本委員会によって行われ、最終候補作品にノミネートされる30冊が決定します。
最終選考は絵本委員会が委嘱した最終選考委員によって行われます。
最終選考委員は作家、画家、絵本研究者、美術評論家などによって構成されています。
ここで日本絵本賞受賞作品が4点まで選ばれ、その中で最も優れた作品に日本絵本賞大賞となります。

翻訳絵本が選ばれると、日本絵本賞翻訳絵本賞になるんだって!
・松本猛(絵本・美術評論家、ちひろ美術館常任顧問)
・伊藤たかみ(作家)
・福田美蘭(画家)
・佐々木泰(読書推進運動協議会事務局長)
・小林功(全国学校図書館協議会絵本委員会委員長)
大賞があるとは限らない!?
ちなみに、日本絵本賞は大賞がない年もあります。
翻訳絵本も含め、該当作品がないと判断された場合は日本絵本賞のみの授与となります。
また、第3回からは読者賞も選ばれる年がありましたが、第25回からは選考中止となっています。
これまでの受賞作品抜粋(絵本にっぽん賞大賞)
まずは前身となっていた1978年~1992年の「絵本にっぽん賞」より受賞作品をいくつかご紹介します。
最初の大賞受賞作品は『ふくろう』
現在は絶版となっているようです
初回の大賞に選ばれたのは宮崎学さんの写真絵本『ふくろう』でした。
貴重な写真の数々でふくろうの子育てを描いた作品です。
残念ながら絶版となっていますが、図書館などではご覧になれると思います。
絵本ではなくフクロウの写真集も出されており、こちらは再版されています。
鳥好きなお子さんにもおすすめ!
第4回大賞は『キャベツくん』
ライオンがキャベツを食べるとどうなるのかな? じゃあクジラが食べると? キャベツくんとブタヤマさんの楽しい会話のおもしろさ。
文研出版「キャベツくん」
ロングセラーのナンセンス人気作品
ナンセンス絵本といえば、な長新太さんの代表作品が第4回の絵本にっぽん賞大賞受賞作品です。
今の子どもたちにも大人気の絵本ですよね。
我が家の子どもたちももれなく大好きでしたが、特に末っ子のポテトはシリーズ全制覇するほどお気に入りでした。
第8回大賞は『絵で見る日本の歴史』
石器時代から現在までの歴史が、長大な絵巻のように展開されます。農民、漁民、職人など生産に携わった人が登場し、当時の人々の暮らしや時代背景が、イラストから読み取れます。巻末の解説では、当時の人々が使っていたものやどのような仕事をしていたかが、さらに詳しく描かれており、時代考証が細部にわたってされているので歴史の勉強にも役立ちます。
福音館書店「絵で見る日本の歴史」
歴史の学習が始まる高学年におすすめ
学習にも役立つ絵本が第8回の絵本にっぽん賞大賞受賞作品です。
丁寧に細かなところまでしっかり描かれた絵は、大人が見ていても勉強になります。
歴史の学習が始まる高学年の予習にも復習にもおすすめ!
第13回大賞は『ふゆめがっしょうだん』
「みんなは みんなは きのめだよ」と合唱団が歌います。春を待ちわびるように「パッパッパッパッ」と、木の芽たちが個性的な顔で歌います。冬の公園や雑木林で、木の芽を見てみると動物や帽子をかぶった子どもの顔のように見えます。目や口に見えるところは、おにぐるみ、えのき、ねむのき、くわなどの落葉した葉の柄がついていた跡です。木の芽の冬姿を拡大して撮影した愉快な写真絵本です。
福音館書店「ふゆめ がっしょうだん」
目のつけどころが楽しい写真絵本
冬、葉をつけていない木々をじっくり観察したことがある人はそう多くないでしょう。
でもこんなに素敵な世界が広がっていると教えてくれます。
ユーモラスな表情はついつい笑ってしまうほど。
自分でも探してみたくなっちゃうこと間違いナシです!
最終第15回大賞は『となりのせきのますだくん』
わたし、きょう、学校へいけない気がする。だって……。
Amazon「となりのせきのますだくん」商品説明より
一年生になったばかりのみほちゃんは、となりの席のますだくんが怖くてしかたない。でも、ますだくんはそんなみほちゃんの気持ちも知らず、どんどんちょっかいを出してきて……。
すべての子どもが共感できる作品です。
メッセージ性の強い短編集
世界が広がるにつれ、様々な人とのかかわりも増えていきます。
その中でどうしてそんなことをするの?と言いたくなる子に出会うことも。
そんな戸惑いを丁寧に描いたこの絵本は子どもたちの心に響くはずです。
これまでの受賞作品抜粋(日本絵本賞大賞)
ここからは1995年以降、日本絵本賞となってからの大賞受賞作品をいくつかご紹介します。
第1回日本絵本賞大賞は『はやくねてよ』
眠れなくてぶたさんの数をかぞえるこうたろうくん。1ぴき、2ひき…290ひきまで数えたけど、眠れない。そこで…?
岩崎書店「はやくねてよ」
かぞえるのは羊じゃない
眠れないときに数えるのは羊が定番だけど、数えるものが変わるだけでこんなに楽しい。
寝る前の読み聞かせには楽しくなっちゃうかな?
クスッと笑えるお話です。
第7回日本絵本賞大賞は『けんかのきもち』
仲良しのこうたとけんかしたたいは、泣きながら家に帰った。こうたがあやまってくれたけれど、けんかの気持ちは終わらない。けんかを通じて深まっていく子ども同士の関係を描く。
Amazon「けんかのきもち」商品説明より
大人が忘れてしまった気持ち
特にきょうだい喧嘩をしていると、親はすぐに止めたくなっちゃいますよね。
何が原因なのか、どちらが悪いのか、まるで裁判官になったかのように止めてしまいます。
でもこの作品を読むと、大人もいろいろと考えさせられます。
第17回日本絵本賞大賞は『もりのおくのおちゃかいへ』
おつかいに行くキッコちゃんが見つけた不思議な館。そっとのぞいてみると、おめかしした動物たちがすてきなお茶会を開いていました。
偕成社「もりのおくのおちゃかいへ」
モノクロの世界に鮮やかな差し色
モノクロの世界は、森ということもあってなんとなくミステリアスに感じます。
動物たちの視線に晒されてハッと息を呑むようなページもあります。
だけど最後はほっこり、心温まる作品です。
第22回日本絵本賞大賞は『きょうはそらにまるいつき』
夕暮れの公園で、乳母車の中から赤ちゃんが空を見ています。東の空から、まんまるい月がのぼってきました。
偕成社「きょうはそらにまるいつき」
バレエの練習から帰る女の子や、新しい運動靴を買った男の子、仕事が終わった洋裁店の親子や、ギターの練習をしている人、夕食のかたづけをするおじいさんとおばあさん。町に暮らす人たちも、ふと見あげた空にまるい月をみつけます。
公園にあつまった猫たち、山にいる熊の親子、海でジャンプするクジラの上にも、まるい月が輝いています。
それぞれの人が暮らす、それぞれの場所に、やさしい光がふりそそぐ夜。町の公園では、にぎやかなお祭りがはじまりました。
夜空を見上げたくなる
どんな夜にもそれぞれの過ごし方があって、でもいつも空には月がある。
まるで見守ってくれているように感じます。
満月の夜にしっとりと読み聞かせたい絵本です。
今年の日本絵本賞受賞作品は?
2025年5月、今年の日本絵本賞各賞が発表されました。
今年の日本絵本賞大賞は『ぼくはふね』
ちいさな船が海を進んでいくと、嵐がやってきて海は大荒れに。ヘリコプターに吊り上げられて助けられますが、地面の上に置かれてしまい、もうどこへも行けない、おしまいだとなげきます。そこへ他の船がやってきて「その気になれば、どこだって進めるものだよ」と声をかけます。ちいさな船はその気になって、山や畑、街の中をどんどん進みます。絵本作家として50年、五味太郎さんの集大成作品です。
福音館書店「ぼくはふね」
装丁にもこだわって作られた絵本
五味さんといえば「きんぎょがにげた」が有名すぎますが、これまで300作品以上を世に送り出してきた多作な絵本作家さんです。
こちらは集大成と銘打つだけあって、飄々とした雰囲気もありつつもハッとさせられます。
大人は深読みしたくなっちゃいますね。
今年の日本絵本賞『ひとのなみだ』
ロボットの兵隊が戦争に行く世界で、ぼくたちは安心して暮らしているはずだった。
童心社「ひとのなみだ」
非戦と平和への願いを込めて、詩人・内田麟太郎が描く近未来とは──。
現代の戦争について考えさせられる
このお話ではロボットが戦争に行きますが、今もドローンで戦争をしていることを思えば色々と響くものがあります。
戦争は今も存在しているのに、どこか他人事のように思ってしまっていないか。
これからを生きる子どもたちとともに、大人も真剣に向き合わなくてはなりません。
nakabanさんの絵もほの暗く心に突き刺さってきます。
今年の日本絵本賞『ゆきのこえ』
雪が降った翌朝、あたり一面まっしろな中、はーっと白いいき。
雪の朝はしずか。一歩ずつ雪をふみしめると「くすすすす」」と、足もとから音が広がります。
聞こえたのはゆきのこえ?おーなり由子とはたこうしろうが描く、ふゆの朝。
Amazon「ゆきのこえ」商品説明より
かがやく雪の世界を体ぜんぶを使って感じる雪の絵本。
このお二人の作品『どしゃぶり』がとてもすきなので、こちらも期待していましたが期待以上です!
大人は雪が降るとうんざりしちゃうけど、子どもにとっては憧れそのもの。
そんな気持ちが目いっぱい詰まっています。
雪の音をゆきのこえとする表現もいいし、はたさんの絵もとっても素敵!
今年の日本絵本賞翻訳絵本賞は『ねえ、おぼえてる?』
「ねえ、おぼえてる? パパと3人で、野原へピクニックにいったときのこと」
偕成社「ねえ、おぼえてる?」
明かりを消したあとのベッドでかわされる母と子の親密な会話。
喜びと痛みをともなう思い出を受けとめて、新しい人生を歩みはじめる2人をてらす朝の光。
絵本の可能性をきりひらく作品で、世界から注目を集めるシドニー・スミスが、自らの子ども時代の体験を3年がかりで描いた、心ゆさぶる絵本。
世界各地のいろいろな賞を受賞しているシドニー・スミスの作品が今年の日本絵本賞翻訳絵本賞に選ばれました。
絵がほんとうに素晴らしくて、息遣いまで聞こえてきそうなほど。
大人の方にもぜひ読んで欲しい絵本です。

世界各地のいろいろな絵本賞についてはこちらから!
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