世界を対象にした絵本賞ってあるの??
コールデコット賞はアメリカで最も権威ある児童文学賞のひとつと言われています。
以下の記事で解説したように、受賞対象はアメリカ市民もしくは居住者に限られている、アメリカの賞です。
では国々の枠を超えた絵本賞はないのでしょうか?
もちろんあります、そのひとつがこの国際アンデルセン賞!
今回はこの世界的な児童文学賞である国際アンデルセン賞について解説します。
国際アンデルセン賞について
国際アンデルセン賞って?
国際アンデルセン賞の正式名称は「Hans Christian Andersen Award」。
そう、あの「人魚姫」や「マッチ売りの少女」などでお馴染みアンデルセン童話のハンス・クリスチャン・アンデルセンにちなんだ児童文学賞です。
1953年に国際児童図書評議会(IBBY)によって創設された、世界ではじめての国際的な児童文学賞なんです。
最初の授与は1956年、エリナー・ファージョンの『ムギの王さま』という作品に贈られました。
それから3回は作品に対して授与されましたが、1962年からは全業績に対して贈られることになりました。
コールデコット賞は作品に対してなので複数回受賞がありましたが、国際アンデルセン賞は全業績に対してなので1度きりの受賞になります。
授与は隔年、作家賞と画家賞があります
授与者は国際児童図書評議会(IBBY)によって選考され、隔年で授与されています。
第4回となった1962年からは永らく子どもの本に貢献してきた作家の全業績に対して授与されることになり、アメリカの作家マインダート・ディヤング氏に贈られました。
第6回の1966年には作家賞と画家賞が設立されました。
現在はデンマークのマルガレーテ2世女王陛下の後援によって運営されており、その高い選考水準から「小さなノーベル賞」とも称されています。
受賞基準は?
言葉にするとシンプルです。
児童文学への永続的な寄与
どのように選ばれる?
国際児童図書評議会(IBBY)の各国支部が、それぞれの国で受賞にふさわしい作家と画家を選び推薦します。
その候補となった作家及び画家の作品など全業績をまとめた資料をもとに、国際児童図書評議会(IBBY)の審査委員会が審査をします。
審査委員会は審査委員長と委員9名の計10名から構成され、約半年かけて審査されます。
日本にも支部があり、日本国際児童図書評議会(JBBY)といいます。
日本からも毎回候補者を推薦しているんですよ!
これまでどんな人が受賞してきたの?
子どもの本に対して貢献してきた作家及び画家さんに贈られるだけあって、その受賞者リストには名だたる巨匠たちがずらり。
ここではその中から日本でも有名な数名と、代表作をご紹介します。
ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン
フィンランドの画家・作家のトーベ・ヤンソンも受賞者の一人。
1948年に出版されたこの『たのしいムーミン一家』が世界中で評判となり、1966年に国際アンデルセン賞の作家部門を受賞しました。
上記の作品は小説ですが、ムーミンの絵本もいくつか手掛けています。
コールデコットも受賞しているモーリス・センダック
日本でも大人気の『かいじゅうたちのいるところ』でお馴染みモーリス・センダックは1970年に画家賞を受賞しています。
この作品は現在世界で2000万部以上売り上げており、世界で6番目に売れている絵本です。
1964年にはアメリカの権威ある児童文学賞コールデコットも受賞しました。
世界的なベストセラーになったことも受賞理由のひとつのようです。
フランスらしいオシャレ感漂う絵、トミー・ウンゲラー
『すてきな三にんぐみ』は日本でもロングセラーの人気絵本、トミー・ウンゲラーは1998年に画家賞を受賞しました。
『ゼラルダと人食い鬼』や『へびのクリクター』など、多くの作品が日本語訳されて今も読み継がれています。
フランスの作家らしく、どこかオシャレでシニカルな作品が心を掴みますね!
韓国人ではじめての受賞者、スージー・リー
マイタケが個人的にも好きな韓国人絵本作家、スージー・リーは2022年に画家賞を受賞しました。
この『なみ』は文字のないサイレント絵本なのですが、波の音だけでなく風の音や海の匂いまで感じられるような気がします。
仕掛けが斬新な『このあかいえほんをひらいたら』や、スケートの線で描いた『せん』など才能溢れる作品ばかりです。
日本人の国際アンデルセン賞受賞者は?
世界的権威のあるこの国際アンデルセン賞ですが、日本人の受賞者もいるんです!
日本国際児童図書評議会(JBBY)から推薦され候補者となり、選ばれました。
作家賞は3名、画家賞は2名、計5名も受賞しています。
最初の受賞者は画家賞・赤羽末吉さん
日本人初の受賞者となったのは、昔話絵本でお馴染みすぎる画家・赤羽末吉さんです。
何といっても『スーホの白い馬』は日本を代表する名作絵本。
1980年に2度目の推薦から画家賞を受賞となりました。
他にも『ももたろう』や『かさじぞう』など日本の昔話も迫力のある絵で残しています。
日本人2人目の受賞は安野光雅さん
精密で美しい絵が印象的な安野光雅さんは1984年に画家賞を受賞しました。
エッシャーに影響されたという『ふしぎなえ』は安野さんの絵本デビュー作ですが、世界的な評判となりました。
2020年に94歳でお亡くなりになられるまで、『旅の絵本』『ABCの本』など今も色褪せない数多くの著書を残しています。
日本人初の作家賞を受賞したのはまど・みちおさん
作家賞を日本人で初めて受賞したのはまど・みちおさんです。
まどさんといえば「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」など童謡の歌詞が有名ですが、そんな日本の子どもたちのための詩を世界の人々に知ってもらいたいと、JBBYが当時の皇后美智子さまに英訳を依頼。
そして出版された『どうぶつたち』という絵本が評価され、受賞となったようです。
日本人2人目の作家賞は上橋菜穂子さん
作家賞2人目の日本人作家は、守り人シリーズでお馴染みの上橋菜穂子さん。
2014年、初のノミネートで受賞となりました。
守り人シリーズは大人にも愛され、漫画化やアニメ化もされましたね!
最新の日本人受賞作家は角野栄子さん
2018年に作家賞を受賞したのが、『魔女の宅急便』でお馴染みの角野栄子さん。
2016年にもノミネートされましたが、2018年に二度目のノミネートで受賞となりました。
魔女宅はジブリの印象が強いかもしれませんね。
角野さんは絵本も多く手掛けているので、我が家でもその作品は馴染み深いです。
JBBYでは日本から推薦している作家さんのリストもあります。
2022年と2024年は作家賞に岩瀬成子さん、画家賞には荒井良二さんを推薦したようです。
今年の受賞者は??
隔年で発表されている賞ですが、2024年も国際アンデルセン賞の発表がありました。
毎回4月に発表されているようで、今年は4月8日に記者会見で発表が行われました。
作家賞・画家賞にわけて紹介します。
2024年の作家賞はハインツ・ヤーニッシュ
作家賞はオーストリアの作家、ハインツ・ヤーニッシュが受賞しました。
ヤーニッシュ氏は絵本など創作も手掛けていますが、子どもや大人に向けた朗読や創作のワークショップを行ったり、障がいのある子どもたちに向けてのワークショップを行ったりしています。
国際アンデルセン賞は全業績に対する賞なので、そういったことも選定の理由になったように思われます。
絵本も多く手がけていますので、日本語版のある絵本もいくつかあります。
今年の受賞者の作品が気になる方は読んでみてくださいね。
2024年の画家賞はシドニー・スミス
画家賞はカナダのシドニー・スミスが受賞しました。
今回この記事を書くにあたり調べてみたら、わたくしマイタケこの方の絵本は日本語版すべて読んでおりましたw
どの作品も心に残るすてきな絵本なのでオススメです。
見てください、この表紙の川の描き方!
実際絵本を手に取ってじっくり見ると筆致はどこかおおざっぱのようにも思えるんですが、陽ざしのあたたかさ、水の流れ、ほんとうに素晴らしいです。
そしてまた、他の作品はこの作品とはがらりと雰囲気が違うんです。
共通しているのは、どの作品も本当に心を打つ余韻が残ること。
まだこの方の作品を読んだことがないなら、どれでもいいので1冊手にとってみてください!
世界三大絵本賞のひとつ、国際アンデルセン賞を紹介しました!
コールデコット賞とカーネギー画家賞についてはこちらから
コメント